症状別対処法レポート

アダルトチルドレンとは何か

更新日:2019.07.15
執 筆:整体師 山下国彦

みなさんは「アダルトチルドレン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
最近では、テレビやインターネットなどで目にしたり耳にしたりする機会もあるかと思います。
しかし、言葉だけが一人歩きしていて、具体的にどういった人たちの事を指す言葉なのかよく分かっていないという人も少なくありません。
まるで心の病や自立する事が出来ていない大人を指す言葉として、誤用しているケースも多々あります。

SNSやLINEといったデジタルな繫がりが増え、他人との関係だけではなく家族間の関係さえも希薄になりつつある今、アダルトチルドレンはこれからの家族のあり方を考えるための重要なキーワードとなります。
このページでは、言葉の性質や特徴の解説を行いつつ、体にもたらす問題や生きづらさの正体を1つずつ解き明かしていきます。

アダルトチルドレンとは

子供にとって安全かつ安心して過ごし、成長する事が出来る場所として機能していない家族(機能不全家族)で育つと、幼少時に心に大きな傷を負ってしまったり、感情の抑圧(我慢)をせざるを得なかったりするケースがあります。
そうした子どもの頃の家族の経験を引きずってしまい、大人になっても自分らしく生きる事が出来ない、またはなんとなく生きづらさを感じている人々の事を総称して、アダルトチルドレンと言います。

ここで1つ注意点があります。アダルトチルドレンという言葉は医学用語ではありません。
また、病気や疾患の名称でもありません。あくまで治療概念の話です。
そのため、定義が時代と共に少しずつ移り変わったり、人に都合良く解釈されてしまったりするケースもあるため、注意が必要です。

言葉の発祥はアメリカで、元々「幼少時にアルコール依存症の親のもとで育った人」の事を指していました。
幼少時にアルコール依存症の親のもとで育った子供達が大人になった際に、対人関係に問題が生じたり、漠然とした生きづらさといった悩みで苦しんだりするケースが多いという事実が判明し、注目されました。
当初は「アルコール依存症の親のもとで育った人」の事だけを指した言葉でしたが、そこから時代と共に解釈や言葉の持つ意味が拡大していき、アルコール依存症の親だけではなく、機能不全家族で育った人まで対象は広がっていきました。

なりやすい文化的背景

こうした生きづらさの原因には、日本の文化的背景も大きく関わってきます。
日本では、一般的に人前で怒りや悲しみといった激しい感情を出すことはあまり歓迎されません。

それは、自分勝手に感情を出すのは「みっともない」「恥ずかしい」事であるという常識のもとに教育を受けているためです。
更に、日本では「感情のコントロールができる人=人間的に成熟している人」という認識もあり、感情を抑えこむことが美徳だと考えられています。
すると、本当はもっと怒りたい、もっと泣きたいという自分の心と体が求めている欲求を満たすことが出来ずに、我慢し続ければなりません。

そうした我慢を強いられる事が心と体への大きな重荷となり、生きづらさをより強く感じさせます。
また、男は強くあるべき、女はお淑やかであるべきといった性別の役割という認識も日本では強く根付いています。
こうした文化的背景もアダルトチルドレンという言葉がブームになった1つの要因かもしれません。

アダルトチルドレンの5つの特徴

一般的な特徴としては、下記のようなものがあります。

  • 自分の感情や欲求がよく分からない
    周囲からの要求や期待を敏感に察知しながら生きてきたため、自分自身がどう感じていて、どうしたいのかという自分自身の欲求や感情が分からない。

  • 自分を主張することが出来ない
    自分自身の感じていることや望んでいることがあっても、相手がどの様に反応するかという事を気にしてしまい、表現できない。もしくは、表現するべきではないと考えてしまう。

  • 相手と自分との境界線が曖昧である
    本当は受け入れたくない要求でも、相手に拒絶される事を怖れ、断ることが出来なかったり、相手の問題や責任をまるで自分の問題であるかのように考え、背負い込んでしまったりする。
    時には無意識で、相手を自分の思い通りにコントロールしようとしたりする場合もある。

  • ありのままの自分で良いと思えない
    相手から求められ、必要とされることで自分の存在意義を感じるため、必要以上に強い自責感や完璧主義で自分自身を追い込んでしまう。

  • 自分が大切な存在だと思えない
    相手ありきで自分の事を評価するため、そういった相手が存在しないときに、自己否定感や寂しさ、むなしさ、不安といったネガティブな感情を感じてしまう。
    自分のために何かをする事に対して罪悪感を覚えてしまう。

はまりやすい不健康な習慣

アダルトチルドレンの多くは、心の穴を埋めるために何かに没頭するケースが多く、そうしたパターンから抜けられなくなる事があります。
こうした依存性の高いものに溺れてしまうような不健康な習慣の事を「アディクション」と呼びます。

アディクションには、下記のようなものがあります。

アルコール依存症、薬物依存
摂食障害、仕事依存、買い物依存
ギャンブル依存、セックス依存
ゲーム依存、スマホ依存、SNS依存

アディクションの特徴として、

  • 一時的に気が強くなるなど、気分が大きく変化する。
  • 即効性があるために、何かあった時にもすぐその手段に頼ってしまう。
  • 習慣化すると、頻度や状態が度々エスカレートしてしまう。
  • 適切な範囲でとめようと思っても、自分でコントロールすることが出来ない。
  • 自分にとって都合が悪い結果が出てもやめる事が出来ない。

などがあげられます。

アディクションにはまりやすい要因は、このような習慣が自分の苦しみや辛さを一時的にでも忘れることができ、紛らわせてくれるためです。
アディクションの進行は自分や自分の大切な人の人生を台無しにしてしまう危険性がとても高いため、自覚症状のある方は注意が必要です。

次に、アダルトチルドレンの生き方を紹介します。