症状別対処法レポート

失感情症(アレキシサイミヤ)の原因

更新日:2013.05.27
執 筆:整体師 田島健次

失感情症原因を知る前に、感情はどこから生まれるのかが分からなければ理解しにくいのでそこからお伝えします。
今の医学や研究では主に心=「脳」が反応するとみています。そのため、感情は脳で生まれるものと考えます。
では、脳のどこから感情は生まれるのでしょうか。
それを知るために、まずは脳の解剖を少しお伝えしましょう。

◎「脳」とは頭蓋骨のなかにある。重さ1400gの柔らかい器官

  • 大脳新皮質=理性
  • 大脳辺縁系=感情
  • 脳幹=欲望

☆大脳新皮質…脳の一番外側で容積の80%を占める。性格、創造性、意識
☆大脳辺縁系…中間層 海馬、扁桃核など大脳基底核がある。

☆視床下部、視床

  • 視床下部=人の本能的な欲望を発生させる。摂食中枢、満腹中枢、性欲中枢 ホルモン合成 心拍数も決めている。
    一時的な記憶⇒海馬=コンピューターのメモリー
    長期的な記憶⇒側頭葉=ハードディスク
  • 扁桃核は、好き嫌い恐いという感情を決めている。
  • 大脳基底核は、筋肉の連続した動きを調整している。 パーキンソン病 痙攣

☆脳幹…脳の最下層で生きるための基礎となる部分。(呼吸、血液循環、発汗体温調節)

  • 延髄、橋、中脳、延髄、橋、小脳が共同する事で筋肉が円滑に動く。
  • 中脳=姿勢や歩き方をコントロール。集中力、積極性、気分をコントロールする神経(セロトニン、ノルアドレナリン)

簡単に説明すると、大脳新皮質は私たちが最も使っていると思っているところであり、知的な作業、将来に対する予測や判断はここで行われます。

大脳辺縁系は「古い脳」であり情動や感情の中枢です。
人間の幸福感や存在感と深いかかわりがあり、すなわち喜びや悲しみといった大切な人間感情の源です。
さらに脳幹網様体があり、目覚めたり眠らせたりしていて自律神経やホルモン分泌の中枢であり、すべての意識活動の源である。

これらの間には連絡網があり、お互いの働きを強めたり弱め合ったりしている。
高度な思考をする新皮質が下にある辺縁系(感情)によって影響されるし逆に考えや思いや意志が実は情動や感情に調整されている場合が多い。
もう一つに身体の感覚(姿勢)、内臓(脳幹)の状態にも感情が変化する。

そしてもう一つ感情と密接に関係している部分があります。それは前頭前野です。
前頭前野は、人間にしか発達してなくて機能は複雑な環境に置かれたときに、感情や情動をコントロールして計画的な行動や社会規範にのっとった適切な行動を実行する能力です。

前頭前野が損傷を受けると現実遊離や感情的な接触の低下といった症状が出でくる。
このことから前頭前野の働きの低下でも失感情症になる可能性が考えらえるでしょう。

失感情症になる要因と原因

感情の意味である対象に対する態度や価値づけ。
とありましたが脳の構造は基本的には同じなのに感じ方、考え方がみなさん違います。
もちろん先天的に脳の機能障害があった場合は省きます。
では、なぜ感情が上手く表現できなくなるのかと言うと幼児期の親との関係により強く影響があるのです。

新生児にも基本的な感情が存在し種族、文化の違いがあっても基本的に同じであるのにもかかわらず感情の体験、表現、感情を制御する能力や共感力がなぜ個人によって差が出るのは感情発達に問題があるのです。(認知の発達とは異なる)

感情の発達

感情の発達と感情制御のための認知的スキルの発達は、幼児期の親との関係に密接に結びついている。
親との関係とあるが、主に養育者(母親)になる。
赤ん坊と母親は、お互いの行動や移り変わる欲求を制御したりそれらに合わせたりしようとして、感情の同期を繰り返し赤ん坊と母親の間で精神状態や感情を共有する能力が感情発達にとってきわめて重要である。
特に肯定的な感情の共有により子どもは安心感、安全感を感じ体験することにより自己表現の能力が発達する。

例えば、赤ん坊がお腹が空いた時やオムツに不快な感じがした時に赤ん坊は、言葉で母親に伝えられないが基本的な感情表現として泣いて助けを求める。
その時にすぐに母親に笑顔で対応され要求が満たされると赤ちゃんも笑顔になり安心して眠る事が出来る。
この事が簡単には肯定的な感情発達に重要になる。
逆の場合は、母親が無表情で作業的に赤ちゃんと接したならば不安になり危険があると感じ赤ん坊は恐怖の表現として泣き続けてしまう。
肯定的な感情が発達しづらく常に不安になりやすい感情が強く出てしまう。

生後1年を過ぎて言語が出現すると、子どもが音声や身体での表現をする。この情動表現に親がその意味やそれに対応する言葉を教えることによって感情認識のレベルがあがる。
言語の獲得は、子どもの発達途上の感情制御能力に対して、本人の内面のレベルでも他者との関係においてでも影響が大きい。
自分の気持ちを他者に伝える事により自分の情動が適切かどうかについて確認することが出来る。
その情動をどう管理するかについて親から教えてもらい一緒に感じることにより言語表現力、共感力、信頼感、思考力、統合力、空想力が発達する。

言葉によって表現したり主観的体験について考えたりすることができる能力によって子供はまた、自己の感情や欲求によって生じた緊張を、常に親にたよることなしに抑えたり我慢したりすることが出来るようになる。
感情的耐性が発達するだけではなく、不安、抑うつなどの感情を評価可能なものとして、そしてストレス状況を除去したり変えたりしようとする際の標識として学ぶ。
こうした能力、特に感情や他の主観的体験を表現する能力や、自分自身や他者の精神状態に気づく認知能力の出現は、生後3年に芽生えると考えられる。
三つ子の魂百までという言葉があるくらいなので。

感情形成には、養育者(母親)の存在が大きいと書きましたが親子関係、特に父親のことについて感情発達、社会的適応能力が変わってくることを知っていただきたいと思います。
核家族が増え父親が不在や仕事が忙しく子供と接する時間がないことも不在と考える。
父親は子供と社会をつなぐ役目を担っているので、子供は父親の語る言葉や表情を通して「社会」というものについて考え、社会性を獲得していく。重要なのは父親との情動的交流をともなった経験を通して社会性を身につけることであり、読書などによる単なる知識の獲得だけでな、子供の精神発達に不十分であるということ。
父親不在で情動的交流を行う能力が訓練されないままだと、感情を言葉として表現する能力や情緒の発達にも悪い影響を及ぼすことになる。
父親不在の影響で社会性の貧困がでてストレス耐性の弱い人間をつくることになり、会社などでの上下関係によるストレスに耐える力がなく防衛手段として気持ちが落ち込み失感情症になりやすくなる。

父の武勇伝や会社での自慢話しを聞いたりすることが社会に適応しやすくなるのでしょう。

◎後天的に失感情症になる要因、原因

後天的に失感情症になるのは、ストレスが原因です。

ストレスには、「1.精神的ストレス」「2.構造的ストレス」「3.化学的ストレス」「4.気温湿度のストレス」があります。

  1. 精神的ストレス…精神的ストレスの代表は職場の人間関係でしょう。他には異性関係。
  2. 構造的ストレス…構造的ストレスは、姿勢の悪さでしょう。姿勢により感情の感じかたが変わってきます。
  3. 化学的ストレス…化学的ストレスは、今は飽食の時代なのでいつでも好きな物を口に出来ますがそれがかえって体のストレスを増大している。甘い物や油っこい物は、内臓機能を低下して気分を落ち込みやすくします。もう1つは光でしょう。パソコン、携帯などの強い光がストレスです。 化学的ストレスは依存性が高いので注意が必要です。
  4. 気温湿度のストレス…気温湿度のストレスは、暑い寒い乾燥、ジメジメ感がストレスです。

この様なストレスにより自律神経が乱れ慢性的なストレス状態が続く事により防衛的に失感情症につながるのでしょう。