うつ病・自律神経失調症 治る人 治らない人
終章 自律神経のしくみ

うつ病と自律神経失調症の違い

 「私ってうつ病ですか?」
私は患者さんにこんなことを聞かれる時があります。
人間は知らないことに不安を感じるので、自分がどんな病気でどんな病名なのかを知りたいと思います。
しかし私は医師ではないので、病名を決めることはできません。
また、決めたいとも思いません。

 

 今はいろいろな病名があります。
うつ病・自律神経失調症・不安神経症・恐怖症・○○依存症・PTSD・心臓神経症・適応障害……。
いろいろありすぎて困ってしまいます。
多くの方は、これらの病名の違いがわからないと思います。
お医者さんはカルテを書き、薬を処方するので分類は必要ですが、一般の方は細かく分類することにあまり意味はないと思われます。

 

 心と体は密接につながっていますので、心の問題は体にも影響しますし、体のゆがみや症状は心にも影響します。
また、先ほどお伝えしましたが、一口にストレスといっても心に影響するものと体に影響するものとがあり、その総合的なものが症状として出てくるのです。
そのため、心と体を総合的に考える必要があり、また自律神経失調症やうつ病の区分をしてもその境目はとてもあいまいです。
ですから「自分はどれに当てはまるのだろうか」などと深く考えないほうが賢明と思います。

 

 分類することで逆にレッテルを貼り、「自分は○○という病気だ」と自己暗示してしまうことはよくありません。
これらの病気の方は、病名を知るよりも自律神経を含めた症状の根本的な対策を知ることのほうが大事だと思います。
冒頭の「本編をお読みいただく前に」でもお伝えしましたが、これらはどれも自律神経が乱れているのです。

 

 しかし、細かい分類をする必要はなくとも、病気の進行ぐあいは知っておいたほうがいいので、そちらをお伝えしたいと思います。
病気の進行ぐあいをお伝えする前に、便宜上ここではあえて、自律神経失調症とうつ病を分けてみたいと思います(あくまでも「あえて」です)。
わかりやすくするために医学的見解と異なるところがあります。

自律神経失調症 交感神経が過剰に働き、副交感神経の働きが弱まっている。
主に体に症状が出る。
不眠症、食欲低下、めまい、耳鳴りなど。
軽うつ病状態 軽く心に症状が出てくる。
自律神経失調症の症状にプラスして、何だかやる気が起きない、何をするにもおっくうに感じる、イライラする、感情が激しくなるなど。
うつ病 心の症状も出る。
自律神経失調症の症状にプラスして、まったくやる気が起こらない(精神運動制止状態)。
体が動かせない、生きているだけで辛い、ものごとに対して何の興味もなくなるなど。

※全て自律神経が乱れている。

 自律神経失調症とは、交感神経が過剰に働いていて、副交感神経の働きが低下した状態です。
この場合、主に「体の症状」が出てきます。
主な症状として、心臓がドキドキしたり、眠れなかったり、食欲が低下したりします。

 

 そしてうつ病は、交感神経も副交感神経も両方とも働きが悪くなった状態です。
もしくは自律神経失調症以上に自律神経のバランスが悪くなっている状態です。
この場合、交感神経が働くまでの準備に異常に時間がかかります。
ですから、うつ病の方は午後もしくは夕方からやっと元気になってくる感じがあります。
なかには一日中だるさがとれない方もいます。
また、うつ病の方は副交感神経の働きも低下しているので、一度疲れると回復するのにとても時間がかかるのです。

 

 さらにうつ病は、自律神経失調症の症状に加え、「やる気が出ない」「死にたい」など、「心の症状」が出てきます。
うつ病の場合、やる気そのものが出ないのですが、自律神経失調症の場合は、やる気はあるけれど体がついてこないという状態だといえるでしょう。

 

 通常は、いきなりうつ病になることはあまりありません。
ひどいうつ病もその始まりは自律神経失調症です。
つまり「体の症状」から起こります。
その体の症状に対し何も対策をしないでいると軽うつ状態(軽いうつ病)を経て、うつ病へと移行します。
すると、体の症状だけでなく心の症状も出てくるのです。
ですから、体に症状が出ている時にその対策をすることが非常に大事になってくるのです。
本書では体の症状も詳しく説明していますので参考にしてください。