うつ病・自律神経失調症 治る人 治らない人
第5章 自律神経失調症・うつ病対策 病気との向き合い方

あなたの体からの便り

 欲のために行動する。
そして度がすぎれば病気になってしまいます。
それはわかっている人も多いと思います。

 

 しかし、「いいこと」は欲だと思っていない考え方をおもちの方がいます。
働く=「いいこと」だと思っている方は、働きすぎなのを気に止めません。
親の介護をする=「いいこと」だと思っている方は、自分が病気になりつつも、誰にも頼らずに自分ひとりでがんばります。

 

欲とはその人の価値観です。
価値観はその方が生まれ育った環境や教えられたことなどで変わってきます。
そしてその欲は、脳の大脳新皮質というところで感じています。

 

 一方、自律神経は脳の辺縁系や脳幹という部分で感じています。
頭で考えていなくとも心臓が動いているように、辺縁系と脳幹は体の感覚を感じているところでもあります。

 

 つまり、欲は頭で考えています。
そして、自律神経は体で考えています。

 

 頭では「親の介護をしなければ」、または「親の介護をしたい」と思っていても、体は「今はそんな状況じゃないよ。
疲れているから少しペースを落とそうよ」と思っている場合があります。

 

 また仕事も同じです。
勤勉の民族である日本人は、「多くの仕事をすることを良し」とする価値観をもっています。
勤勉はとても大事なことだと私も思っています。
しかし、何事にも限度というものがあります。

 

実は、あなたの価値観でよいと思うことでも悪いと思うことでも体にとっては「欲は欲」なのです。
欲は多すぎると体によくないことはあなたも知っていると思います。
「食べすぎ」
「飲みすぎ」
「遊びすぎ」
これらの欲は、誰でもやりすぎてはいけないことだとわかります。

 

 しかし、自律神経失調症やうつ病になる方は、「よいことをたくさんするのは素晴らしい」というような価値観を少なからずもっている方が多いのです。
「仕事のやりすぎ」
「親孝行のやりすぎ」
「弱者を助けすぎ」
などが悪いという価値観はあまりもっていません。

 

 最近でこそ「仕事のやりすぎ」は気をつけるようになっていますが、よいことでも悪いことでもやりすぎはよくありません。
欲は欲なのです。

 

欲は頭で考えます。
「仕事をがんばろう」「もっと親孝行しよう」と思っていることを行い続けているのは、頭で考えていることを優先させるということです。
つまり、あなたは頭を優先させているということなのです。

 

 しかし、たまには「体のいうこと」を優先させてあげてください。
あなたの体は、あなたに今、何を訴えていますか? よ~く聞けばきっと聞こえるはずです。

 

 あなたの体は、今、何を欲しているでしょうか。
おそらく、ゆっくりと休むことを欲しているのではありませんか? 確かに世の中は自分の欲しているとおりに動かないことも多いでしょう。
あれもやらないといけないし、これもやらないといけないし…。

 

 あなたにもいろいろとやらなければいけないことがありますよね。
しかし、これらすべてをやろうとがんばってきたからこそ、あなたは自律神経失調症やうつ病になってしまったのです。

 

あなたは今までに、もう十分すぎるほどにがんばりました。
きっとそれは、あなた自身が一番わかっていると思います。
思い出してみてください、今までのあなたの人生を。
きっと平坦な人生ではなかったかと思います。
さまざまなつらいことやトラブルがあったかと思います。
そしてあなたは、あなたなりに十分にがんばってきました。

 あなたは十分にがんばった。
それはあなた自身の体が一番よく知っています。
その証拠にあなたは自律神経失調症やうつ病などになったのです。
あなたの体は症状という手紙を使い、何かをあなたに訴えかけているのです。
もし本当に、あなたの目の前に手紙があるとすると……。
そこにはいったい何と書いてあると思いますか?