第4章 自律神経失調症・うつ病の対策 ストレス別
精神的ストレスへの対策

自律神経は想像か現実かの区別がつかない。否定型の言葉もわからない。主人公もわからない

 「そうか休養の時間を余った時間ではなく、先にスケジュールに入れてしまえばいいんだな」
「よ~し、スケジュールを一つ素っ飛ばして休む時間を作ろう」
と思ったあなた。
そうですね、なかなかいい感じですよ。

 

 しかし、ここで大事な注意点があります。
これを知らないと、休養の時間がまったく無駄になってしまいます。

 

 それは休養の時間には、仕事やしなければならないこと、嫌なこと、気になっていることなどを考えてはいけないということです。
なぜなら、自律神経は想像と現実の区別がつかないからです。

 

 突然ですが、あなたの初恋は何歳の時でしたか? 3歳? 4歳? 5歳?

 

 初恋でもなくていいので、その頃の恋をちょっと思い出してみてください。
その頃は純粋で(今でも純粋かもしれませんが)、初恋の人のことを思い出しただけで、胸がキュンとして、心臓がドキドキしませんでしたか? 実はこれが想像で反応する自律神経の感覚なのです。

 

 心臓の動きをコントロールしているのは自律神経です。
想像するだけですから、実際に恋い焦がれていた人が目の前にいるわけではありません。
でも想像しただけで、自律神経は「あたかも好きだった人が目の前にいるかのように」心臓を動かしていたのです。
つまり、あなたが実際に仕事をしている時の自律神経の反応と、仕事のことを想像している時の自律神経の反応は、ほとんど同じということになるのです。

 

 仕事をしている時には、動く神経が働くため血管が細くなり、胃腸の活動が遅くなり、心臓の鼓動が少し早くなり血圧も上がります。
もしあなたが、休養の時間に仕事のことを考えたら、動く神経が働いてしまい、血管が細くなり、胃腸の活動が遅くなり、心臓の鼓動が少し早くなり、血圧も上がるという、働いている時とまったく同じ反応を自律神経がしてしまうのです。

 

 これでは休んで疲れをとるどころか、余計に疲れてしまいます。
ですから休養の時間は、仕事や義務的なもの、あなたの嫌なことなどは、一切考えないようにしてください。

 

 しかし、考えないようにしようとすると考えてしまうのが人間です。
実は、自律神経には否定形の言葉が通じないのです。
自律神経はすべてを肯定的にとってしまうのです。
では、それをちょっと体感してみましょうか。

 

 ここであなたにお願いがあります。
「1分間、犬のことを考えないでください」 どうでしょうか、あなたは今、ほんのちょっと犬のことを思い出しませんでしたか? このように、自律神経は否定形がわからないのです。

 

 では、犬のことを思い出さないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
それは「猫」のことを考えればいいのです。
そうです、脳には否定型の言葉が通じないため、「思い出さないでください」というと思い出してしまうのです(脳の真ん中が自律神経の始まりです)。
そのため、休養の時間は、仕事のことや嫌なことを思い出さないように考えるのではなく、楽しいことやうれしいことを考えてあげればいいのです。

 

 通常、これが趣味といわれるものになります。
「嫌なことは忘れようと思っても忘れられない、考えないようにしても考えてしまうので、趣味などをもち、それにとらわれないようにすることが大事なのですね。

 

 ついでにお伝えしますと、自律神経は主人公もわかりません。
例えば、Aさんがあなたの目の前でBさんに怒られているとします。
この時、あなたも嫌な気がすると思います。
それはなぜでしょう? それは自律神経は主人公がわからないからなのです。

 

 どういうことかといいますと、AさんはBさんに怒られています。
この時の主人公はAさんです。
しかし自律神経は主人公がわからないので、すべて自分を主人公にしてしまいます。
つまり、あなたの頭では、怒られているのはAさんだとわかっているのですが、あなたの自律神経は、あなたが怒られていると思ってしまうのです。

 

 怒られる=ストレスなので、あなたの自律神経は動く神経が過剰に働くことになります。
もう、いわなくてもおわかりだと思いますが、動く神経が働くので心臓がドキドキして、血圧が上がり、胃は縮み、胃腸は活動を止めてしまいます。

 

 このように自律神経は主人公がわかりません。
ですからホラー映画や格闘技などを見ると、見ている人の自律神経は、あたかも自分がホラー映画の中の主人公のような反応を起こしたり、まさに今、格闘しようとしている選手のような反応を起こしたりするのですね。

 

 体や脳が元気な時は、それがいい刺激になるのですが、自律神経失調症やうつ病の方は、大きな精神的ストレスになります。
特に症状がひどい時はホラー映画や格闘技やスポーツ観戦なども控えたほうがいいでしょう。