うつ病・自律神経失調症 治る人 治らない人
第2章 自律神経失調症・うつ病の特有な症状

不眠症

  • 「目がさえて眠れない」
  • 「疲れているのに眠れない」
  • 「眠りたいのに眠れない」
  • 「○○が気になって眠れない」

 現在、このような不眠症の方が急増しています。
私の整体院にも不眠症の患者さんが多く来院します。
不眠症に限らず自律神経失調症やうつ病は、「休む神経」の力が弱くなっているのです。

 人間の体には自律神経という神経があります。
自律神経には「休む神経」と「動く神経」との二つがあります。
眠ったり休んだりする時には「休む神経」が強くなり、「動く神経」は弱くなります。
それとは逆に、働いたり、緊張したり、ストレスを感じる時には「動く神経」が強くなり、「休む神経」が弱くなります。

 ちなみに、休む神経を副交感神経といい、動く神経は交感神経といいます。
わかりやすいように、本書では「休む神経」「動く神経」という言葉を使っています。
自律神経はわかりにくいので、表にまとめてみました(下記参照。
自律神経についてもっと詳しく知りたいという方は終章の「自律神経のしくみ」をお読みください)。

自律神経のしくみ

自律神経
 動く神経(交感神経)

 休む神経(副交感神経)

動く神経が強い=休む神経が弱い
動く神経が弱い=休む神経が強い

作用 強くなる時 感情
動く神経
  • 頭を動かす
  • 筋肉を動かす
  • 緊張する
  • 興奮する
  • 働いている時
  • ストレスを感じる時
  • 運動をしている時
  • 不安な時
  • 怒り
  • 不安
  • 恐れ
  • 悲しみ
  • 興奮するほどの喜び
休む神経
  • 眠る
  • 休む
  • 病気やけがを治す
  • 疲労を取る
  • リラックスしている時
  • 寝ている時
  • ご飯を食べた時
  • 愛情を感じる時
  • 安心感
  • 幸福感

 通常、夜は休む神経が強くなります。
ですから夜は眠くなるのですが、不眠症の方は、夜でも休む神経が強くならないのです。

 では、なぜ眠りたいのに休む神経の力が強くならないのでしょうか。
それにはいくつかの原因があります。
そのいくつかの原因をお伝えする前に、まずは不眠症の三つの種類をご説明いたします。

不眠症の種類 ①入眠困難

 多くの方がいわれる「眠れない」という状態は、入眠困難といいます。
文字どおり、眠りに入ることができない状態です。
朝方の3時や4時まで眠れないということもよく耳にします。

不眠症の種類 ②中途覚醒

 眠りに入ることはできるが、睡眠の途中で起きてしまうことを中途覚醒といいます。
途中で起きてしまっても、すぐに眠れる人は問題ありません。
しかし、一度起きてしまうとなかなか眠れない方、または、起きても時間がたてば眠れるが、また起きてしまう方は中途覚醒の状態です。
トイレなどで起きるのは中途覚醒とは違います。

不眠症の種類 ③早朝覚醒

 用もないのに朝早く起きてしまうことを早朝覚醒といいます。
7時に起きれば十分なのに、4時や5時に自然と目が覚めてしまう状態です。
早朝覚醒で目覚めた時に、眠い方は自分が不眠症といわれても納得がいくでしょうが、目覚めた時から元気に感じる人もいます。
一見健康そうに見えますが、「動く神経」の力が強まりすぎているための現象で、これも立派な不眠症といえます。
こういった方は、昼間に眠くなる時が多いと思います。

 入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒、これらはすべて「不眠症」という状態です。
それでは次に不眠症の原因についてお話しします。
不眠症の原因は、次の三つがあります。

不眠症の原因 ①自律神経のリズムが狂ってしまっている場合

 例えば、昼寝を長くしてしまった場合などは、自律神経のリズムが狂い、不眠症でなくとも寝つきが悪くなったりします。
たまにこんな日があるのはいいのですが、この状態が続くと昼夜逆転になってしまいます。

 昼夜逆転とは、昼間に眠くなり、夜に目がさめてしまうことをいいます。
ですから不規則な生活は不眠症の原因の一つです。
夜遊びは当然として、夜勤や夜2時以降に寝る方は自律神経のリズムが狂いやすいので注意してください。
体力のあるうちは夜遊びでも夜勤でも大丈夫ですが、体力(詳しくは第3章参照)がなくなってくると不眠症になりやすくなります。

不眠症の原因 ②心の興奮が治まらない(短期的)

 心の興奮が治まらない状態とは次の二つがあります。

昼間に緊張や興奮をしすぎた場合
明日(将来)のことで緊張や興奮している場合、または不安な場合

 昼間に緊張や興奮をしすぎた場合は、その緊張や興奮が夜になっても鎮まりにくいので、眠れなくなる場合があります。

 例えば、大きなストレスを受けたり働きすぎたりした場合、疲れてゆっくり眠れそうですが、実は緊張しすぎてしまい動く神経が強くなりすぎて、夜になっても動く神経の働きが弱まらなくなってしまうのです。
すると「疲れているんだけれど眠れない」という状態になってしまいます。
こんな状態の不眠症はとてもつらいですよね。
学生の頃、部活動の練習で経験された方もいると思います。

 では次に、明日(将来)のことで緊張や興奮している場合、または不安な場合の説明をしましょう。

 明日(将来)のことで興奮している場合とは、子どもの頃、遠足が楽しみで興奮して眠れないというようなことです。
きっとあなたにもそんな経験があるかと思います。
結局眠れずに朝寝坊してしまい、当日遅刻してしまった方もいるかもしれませんね。

 しかし、楽しみで興奮する時もあれば、不安になって眠れなくなってしまうこともあります。
それは明日の仕事のことなどを考えてしまい、不安を感じて眠れなくなるという状態です。

 楽しみな仕事であれば先ほどの子どもの頃の遠足と同じ状態の不眠症ですが、嫌な仕事だと不安感などから動く神経を強くさせてしまい、不眠症となります。
心配事が多いと、その心配事が気になって、なかなか眠れない状態になってしまうのがこの状態です。
この状態が続くと、次の「不眠症の原因の継続的緊張(長期)」になってしまいます。

不眠症の原因 ③継続的緊張(長期)

 長期間ストレスや不安などを感じていると、心と体が緊張癖をもってしまいます。

 例えば、長期間人間関係などで悩んでいたり、災害などに遭い、避難所などで暮らしていると、心が休まらない状態が続くといった感じです。
この状態ですと、動く神経が強くなり眠れなくなってしまいます。
特にいつ終わるかわからない「終わりのないストレス」を感じている方は、ストレスの強さが増しますので不眠症になりやすくなります。

 また、繊細な方は人よりストレスを感じやすいので、不眠症になりやすいといえるでしょう。

えっ、眠っているのに不眠症なの?

 朝から疲れている方、昼間いつでも眠れる方、夢をよく見る方などは、眠っているようで眠っていません。
この場合、脳と体の持続的な緊張から眠りが浅い状態か、もしくは眠っている時間が足りない(睡眠不足)かのどちらかか、または両方です。

 人間は、生きていれば体や脳に疲労物質というものがたまります。
本来、それは眠っている間に休む神経が取り除いてくれているのですが、休む神経の働きが弱いと、疲労物質の多くが取り除かれません。
すると朝から疲れている状態になります。

 また、昼間いつでもどこでも寝られる方も不眠症の疑いがあります。
眠りが浅い不眠症ゆえに睡眠が足りていません。
そのためいつでもどこでも寝られるのですね。
脳と体が睡眠をほしがっている証拠です。
決して神経が図太いのではありません。

 「夢をよく見る」という方も眠りが浅い可能性があります。
通常、人間は睡眠時に浅い眠りと深い眠りを8分ごとに交互に繰り返しています。
この浅い眠りの時に夢を見ているといわれています。
夢をよく見るというのは、眠りの浅い時間が多いということです。
特に怖い夢や動けない夢、何かから逃げる夢などは、精神的なストレスが潜在的にあると思われます。